多元接続方式 OFDMA
OFDMA とは、同一の周波数の電波を複数のユーザーで共有する「多元接続」方式の一種です。
第3世代、第3.5世代の携帯電話回線で使用されている多元接続方式である CDMA に変わる新しい多元接続技術です。
音声通話よりもデータ通信に適した多元接続方式です。
OFDMA の特徴を知るにはまず、「音声通信とデータ通信の違い」と「CDMAの特徴」を理解する必要があります。このことを説明してから OFDMA の特徴を解説します。
音声通信とデータ通信の違い
携帯電話による通話などの音声通信においては、常に同一の通信速度で途切れることなく安定的に接続できることが大事です。会話に必要な音を送受信するだけなので、それほど高速回線である必要もありません。
音声通話の場合、「早口の大阪人が通話すると高速回線が必要になり、無口な高倉健が通話すると低速回線でも良い」ということはありません。必要な通信速度は常に一定です。
これに対しコンピュータによるデータ通信の場合は事情が異なります。
データ通信では、突発的に大量のデータが送受信されたり、全く通信が行われなかったりということを繰り返します。
パソコンで「Youtube」などの動画サイトにアクセスした場合を想像してみましょう。
ブラウザでYoutubeにアクセスした直後は、Youtubeのタイトルやコメントなどが記述されているHTMLファイルと動画ファイルがパソコンにダウンロードされます。このダウンロードしている間は高速の通信速度が必要になります。
しかしダウンロードが終了して、ユーザーがダウンロードの完了した動画を視聴したりコメントを読んでいる間は、まったく通信が行われていません。この間は通信速度は0でも構わないわけです。
無線通信においては、音声通話とデータ通信では電波の利用方法が変わってきます。
音声通話の場合は、全ての利用者に対して常に一定の電波資源を安定的継続的に確保し続けなければなりません。
しかし、データ通信の場合は、突発的に大量のデータが送受信されたときは大量の電波資源を確保しなければなりません。逆に一時的に通信していないときは、他の利用者のために電波資源を解放しなければなりません。
CDMA
CDMA(code division multiple access) とは、日本語では「符号分割多元接続」と呼び、同一周波数の電波を複数のユーザーが共有できる多元接続技術の一種です。
それぞれのユーザーの信号に異なる「符号」を付けて、同一の周波数の電波に複数ユーザーの信号を合成して載せます。
受信側では、合成された信号を分解して、自分の「符号」の付けられた信号を取り出します。
このようにそれぞれの信号に「符号」を付けることにより、同一周波数の電波を複数のユーザーが共有できるようにする技術です。
元々、音声通話用に開発されました。
しかし、第3世代(W-CDMA,cdma2000) と 第3.5世代(HSPA,EV-DO等) の携帯電話回線モバイルブロードバンドにも使用されています。
音声通話に適した多元接続方式ですが、データ通信では問題があります。
無線通信で使用する電波の周波数の最小単位を 搬送波(キャリア) と呼びます。信号を載せられる最小単位です。
モバイルブロードバンド(ワイヤレスブロードバンド)で使用する電波の周波数の帯域幅の中には、たくさんの搬送波が含まれています。
CDMAでは、ある搬送波で大量のファイルをダウンロードしているのに、別の搬送波では通信を行っていないのに電波資源を独占している、ということが起こります。
使われていない電波資源が発生してしまいます。
つまり、電波資源をユーザーごとに独占的に割り当てる為、データ通信においては電波の利用効率が悪いということです。
この問題を解決したのが OFDMA という多元接続技術です。
OFDMA
OFDMA (Orthogonal Frequency Division Multiple Access) は、日本語では「直交周波数分割多元接続」と呼ばれます。
OFDMAでは、搬送波をユーザーごとに分割してユーザーに割り当てたりしないで、複数の搬送波を複数のユーザーが共有します。
OFDMAは、電波資源を周波数とミリ秒単位の時間で細かく分割します。そして複数の搬送波を束ねて搬送波群を作ります。この搬送波群をユーザーごとに割り当てます。
搬送波群は既にミリ秒単位の時間で分割されていますから、ユーザーの通信状況に応じて効率的に搬送波群をユーザーに割り当てることができます。
大量のファイルをダウンロードしている最中のユーザーには多数の搬送波群が割り当てられ、通信していないユーザーには搬送波群が割り当てられません。
搬送波群の割り当て状況はミリ秒単位で次々変化していきます。
つまり、OFDMAとは電波資源を周波数と時間で、細かく分割して、ミリ秒単位で電波資源の再配分を繰り返すしくみです。
LTE の OFDMA を例に具体的に説明します。
数学でよく使う xy座標 (二次元座標)を想像してください。
この xy座標 に電波を載せてみます。
y座標 には「周波数」を割り当てます。単位は Hz(ヘルツ)です。
x座標 には「時間」を割り当てます。単位は「ミリ秒」です。
x,yともにマイナスはありません。プラスだけです。(x>0,y>0)
周波数の最大値は 5MHz です。(将来的には10MHz,15MHz,20MHzへと拡張されます)
時間には上限はありません。これは通信している時間のことです。
まず、時間を 0.5ミリ秒単位 に分割します。電波が時間方向に無数のブロックに分割されます。
次に周波数を分割します。
LTE の OFDMA では一つの搬送波の帯域幅は 15kHz です。つまりy座標が15kHz単位で分割されています。最大値が5MHzですから y座標 には全部で 333個 の搬送波が並んでいることになります。
この搬送波を12個ずつ束にします。この搬送波の束の帯域幅は 15kHz x 12 = 180kHz になります。
最大値が 5MHz ですから y座標 には全部で 27個 の搬送波の束が並びます。
この縦(y座標)180kHz、横(x座標)0.5ミリ秒のブロックが搬送波群です。
OFDMAでは搬送波群のことを「リソースブロック(RB:Resource Block)」と呼びます。ユーザーに割り当てられる通信資源(電波資源)は、このリソースブロックを単位に割り当てられます。
動画ファイルのダウンロードなど大量の通信をしているユーザーには多数のリソースブロックが割り当てられます。
メール受信など少量の通信をしているユーザーには少数のリソースブロックが割り当てられます。
ダウンロードを完了してWEBページを読んでいる現在通信していないユーザーにはリソースブロックが割り当てられません。
そして、リソースブロックの割り当ては 0.5ミリ秒 に一回見直され、再割り当てが行われます。
OFDMAの場合、使われていないのにユーザーに独占されている電波資源というものが発生しません。
電波資源を効率よくユーザーに配分できます。
OFDMA はどこで使われているか
OFDMA は、モバイルWiMAX と XGP で採用されています。
また、第3.9世代携帯電話(LTE) でも採用されます。
残念ながら第3.5世代(HSPA,HSPA+,DC-HSDPA)では採用されません。