わかりやすいモバイルブロードバンドモバイル通信入門ペースメーカーへの影響について

ペースメーカーとモバイルブロードバンド

 ペースメーカー とは、正式には「心臓ペースメーカー」と呼ばれ、重度の不整脈など心臓に障害を持つ患者の心臓に、人工的に電気刺激を与え心筋を刺激して正常に心臓を稼働させる装置です。

 携帯電話が普及し始めたころから、電車の中などの公共空間で大声で電話をするマナーの悪い人々が増えたことを受けて、「携帯電話の電波はペースメーカーに影響を及ぼし最悪ペースメーカー患者の命を奪う危険性がある。よって、人の密集する公共空間では携帯電話を使用してはならない!」というキャンペーンが繰り返し報道されました。
 ペースメーカー患者の方々は、毎日通勤電車の中で「自分のペースメーカーが携帯電話の電波で停止してしまうのではないか」という恐怖に震えていると聞きます。

 しかし、皆さんはここで疑問に思いませんか?
 最近では電車の中で電話で話すマナーの悪い人は見かけなくなりましたが、携帯電話の機能の発達により、電車の中でメールを送受信したり、インターネットを利用してゲームなどをしている人は逆に増えています。
 つまり、携帯電話の電波を発信している人は逆に増えています
 なのに、携帯電話が普及してからもう十年以上経つにもかかわらず、「携帯電話の電波が原因でペースメーカーが誤作動して危険な状態になった」という事件は一件もありません。少なくとも私は聞いたことがありません。
 携帯電話だけではありません。東京タワーは毎日100kWの超強力な電波を送信し続けています。
 テレビ局の発信する電波も携帯電話とは比較にならないほど強力なものです。
 大都市圏には公衆無線LANの電波が飛び交っています。
 無線LANも普及していますから隣の家の人が無線LANの電波を発信しているペースメーカー患者の方も多いでしょう。
 家電製品の無線化も進んでいます。
 空からはBS放送やCS放送の電波が雨あられと降り注ぎます。
 なのにペースメーカーが誤作動を起こした事件は一件も起こっていません。

 2006年に総務省が携帯電話(800MHz帯 W-CDMA 端末)の電波がペースメーカーにどの程度影響を与えるか調査したそうです。その結果、「携帯電話をペースメーカーの半径 3cm 以内に近づけると影響があった」ということです。逆に「半径 3cm 以上離れていれば影響は無い」ということです。
 しかも、「3cm 以内に近づけても、ペースメーカーから携帯電話を 3cm 以上離せば元に戻った」そうです。
ペースメーカーの半径 3cm 以内」といえば「体内」です。現実には、携帯電話をペースメーカーの半径 3cm 以内に近づけることなど不可能ではないでしょうか。
 医療機器メーカーから発表されているペースメーカー取り扱いガイドラインでも、「ペースメーカーの半径 22cm 以内に携帯電話を近づけないでください」となっています。
 22cm ならば、「胸ポケットに携帯電話を入れると危ないが、尻ポケットなら大丈夫」というレベルです。ペースメーカー患者本人が携帯電話を使用しても大丈夫だということです。22cm という数字はかなり余裕を持った数字でしょう。余裕を持っても、たった 22cm です。隣の人の携帯電話が自分のペースメーカーに影響を与える可能性はほとんど無いのではないでしょうか。

植込み型心臓ペースメーカ利用者の携帯電話使用上の注意

 皆さんは「疑似科学」という言葉をご存じでしょうか。
 「疑似科学」は「ニセ科学」とも呼ばれ、本物の科学ではない偽物の科学のことです。 「ニセ科学」の最近の例には「マイナスイオン」というのがあります。
 「マイナスイオンを呼吸などで体内に吸収すると活性酸素が消滅して健康に良い」というものです。テレビなどでも盛んに報道されたので聞いたことのある方も多いと思います。マイナスイオンと聞くと一見科学の専門用語のように聞こえますが、これは科学用語ではありません。マイナスイオンなどという言葉は科学的に定義されていません。
 マイナスイオンは家電メーカーが自社の製品を販売する目的で使用した言葉に過ぎません。マイナスイオンの効能が有るとか無いという以前に「マイナスイオンなどというものは存在しない」ということです。
 言わば、マイナスイオンは「詐欺」用語です。
 もう一つの「ニセ科学」に「ゲーム脳」というのがあります。
 「毎日長時間ゲームを続けていると脳に悪影響を与える」というものです。ゲームに差別意識や偏見を持つ人々から絶大な支持を集めている「ニセ科学」です。
 この「ゲーム脳」には科学的な根拠が無く、脳神経の専門家などからの批判を集めています。
 なぜこのような「ニセ科学」が蔓延るのでしょう。
 マイナスイオンは自社の技術力など実力に自信がない家電メーカーなどが、マイナスイオンという「科学の権威」に寄りすがり、「マイナスイオン健康家電」などという詐欺まがいの商品を消費者に売りつけて、不当な手段で利益を得るという話です。
 ゲーム脳は、子供のしつけに自信(実力)の無い親や教師などが、ゲーム脳という「科学の権威」に寄りすがり、「科学の権威」で子供を自分の思い通りに操ろうとする話です。
 どちらも自分の実力に自信のない人間が、「科学の権威」で他人を操ろうとする話です。
 本来は、企業は自社の技術力や販売力などの実力で製品を販売して利益を得るべきですし、親や教師は自分の責任で「しつけ」を行うべきです。
 このように「自分の責任で行動したくない。科学の権威に甘えていたい」という心の歪んだ人々の手で、甘えた人々の手で「ニセ科学」は乱用され続けています。

 私は、「携帯電話の電波はペースメーカーに影響を及ぼし最悪ペースメーカー患者の命を奪う危険性がある。よって、人の密集する公共空間では携帯電話を使用してはならない!」という話も一種の「ニセ科学」ではないかと考えています。
 公共の場でマナーの悪い行いを行うものが存在するのならば、自己の責任で注意すべきです。携帯電話の会話がうるさければ、自己の責任で「うるさいから静かにしてください」と要求すべきです。
 それを、「携帯電話の電波はペースメーカーを誤動作させる」という「科学の権威」に頼って自分で注意することもなく、マスメディアの報道で他人を操ろうとするのは、考え方として間違っているように思えます。
 それどころかペースメーカー患者に不要な恐怖心を与えてしまい、かえって弊害が大きいのではないかと思えます。

 私は、一般に思われているほど、携帯電話やモバイルブロードバンド(ワイヤレスブロードバンド)は危険なものではないと考えています。

 しかし、本当のところ携帯電話やモバイルブロードバンドの電波が、ペースメーカーにどの程度影響を及ぼすのかは、誰にもわからないと思います。私が安全だと考える根拠もネットの情報によるものだから確証はありません。
 本来ならば、公正で中立な信頼できる研究機関などで実験検証して、その結果をマスメディアで公開すべきです。
 大事な問題なのに、よくわからないまま放置されている現状が残念です。
 2010年4月7日

 2010年5月22日更新
 よく調べてみたら、総務省が第3世代携帯電話がペースメーカーに与える影響について調査していました。
 総務省から、以下のような発表が行われています。

 「平成21年度の調査では、1.7GHz帯及び2GHz帯の周波数を用いる携帯電話端末のうちHSUPA方式を用いて高速なデータ通信を行うものを対象とし、心臓ペースメーカ等の植込み型医療機器としては、現在使用されている代表機器(植込み型心臓ペースメーカ41機種、植込み型除細動器28機種)を対象として調査を実施しました。
その結果、HSUPA方式を用いた携帯電話端末の電波がこれらの心臓ペースメーカ等の植込み型医療機器の機能に影響を与えないことを確認しました。」

 やはり、第3世代携帯電話は安全であるようです。しかし、第2世代携帯電話は 「22cm以内」の距離でペースメーカーに影響を与えるようです。古い携帯電話を使用している人は早く買い換えましょう!
 携帯電話回線モバイルブロードバンドは、第3世代以降に実現された技術なので、この調査結果で安全であることが立証されました。
 PHS回線モバイルブロードバンドや、XGP、モバイルWiMAXは、携帯電話回線よりも低出力の電波を使用しているので、より安全だと思われます。
 以下は、総務省の広報へのリンクです。
携帯電話端末による心臓ペースメーカ等の植込み型医療機器への影響に関する調査結果

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